銀行員の損益計算書の見方(その2)

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こちらの記事は前回の記事(銀行員の損益計算書の見方(その1))の続きです。

銀行格付についてではなく、純粋に銀行員が決算書の一部である「損益計算書」をどのような視点で見ているのか?についてお伝えしているものになります。

前回の記事と併せてご覧いただくことでより理解が深まることでしょう。

気になる方は続きをご覧ください。

経常利益は黒字か?赤字か?

 

営業利益の段階では黒字でも、経常利益の段階で赤字に転落してしまうことがあります。営業外収益の赤字が営業利益の黒字より大きい場合に、経常利益は赤字に転落してしまいます。

 

経常利益が赤字ということは営業利益が赤字の場合と同様、返済能力がない、あるいは乏しいことを意味します。長期的に毎期経常利益が赤字の債務者については、返済能力の問題もさることながら資金繰りも逼迫してくる可能性があり、注意が必要です。したがって、なぜ経常利益が赤字なのか調査し、今後黒字転換の見込みはあるのか十分に見極める必要があります。

 

また、経常利益に原価償却等を調整したものを理論的な返済能力と位置づけ、その返済能力でもって借入金を何年で返済できるか、つまり債務償還年数を算出しますが、経常利益は算出の際の基礎となる数値です。債務償還年数は債務者区分を検討するにあたり非常に重要な指標となっていますので、経常利益の動向の把握は欠かせないのです。

 

営業外収益が赤字となる原因で最も多いのは借入金の支払利息負担によるものです。借入金の支払利息は借入金が大幅に減少しない限り、負担額は簡単には減りません。そのため恒常的な負担となりますから、少なくとも負担を上回る営業利益の黒字を確保しないと、経常利益も恒常的に赤字となりがちです。

 

借入金を抜本的に減らすことは簡単にはできません。したがって、支払利息負担を十分に賄える収益力の確保が必要となってきます。営業利益が赤字となった場合と同様に売上対策、採算性の対策、経費対策といった総合的な対策が必要となってきます。

 

経常利益が赤字となる原因として、安定的な営業外収入がなくなってしまったということもあります。例えば、本業以外で不動産の賃貸収入を毎年営業外収入に計上しているとします。その不動産を売却したため、経常利益が赤字になってしまうことがあります。

 

賃貸収入という安定的な収入源がなくなったということですから、売上や採算性の対策など総合的な対応を取らないと、今後は経常利益が常に赤字ということにもなりかねません。

 

経常利益が黒字でも一時的な営業外収入がある場合には、一時的な営業外収入を控除後、経常利益の黒字が維持されるのかどうかはチェックしておきたいところです。一時的な営業外収入により黒字が維持されている場合には、安定的に黒字を確保できる体質にはなっていないということです。一時的な営業外収入がなくなれば、経常利益は赤字転落となってしまいます。

 

経常利益は、債務者区分の判定においても大きな影響を及ぼす指標です。黒字、赤字の要因は十分に確認することが大切です。

 

税引前当期純利益は黒字か?赤字か?

 

税引前当期純利益の段階で赤字かどうかを検証する意味は、特別損益の状態を確認するためです。

 

例えば、経常利益が黒字であっても大きな特別損失が発生すれば税引前当期純利益は赤字となります。逆に経常利益が赤字であっても大きな特別利益が発生すれば税引前当期純利益は黒字となります。税引前当期純利益については、特別利益の状況に大きく左右されますから、経常利益と特別利益の状況を踏まえる必要があります。

 

経常利益が黒字にもかかわらず特別損失により税引前当期純利益が赤字となった場合を考えてみます。この場合、特別損失の内容に着目しましょう。特別損失は基本的には一過性の原因がもとで発生します。

 

したがって、一過性の原因で特別損失が発生し、税引前当期純利益が赤字となってしまった場合には、営業利益や経常利益が赤字の状況と比べて債務者の深刻度は低いと考えることができます。債務者区分においても、必ずしもランクダウンしなければならないというわけではありません。

 

一方で特別損失が毎期発生している債務者も存在します。特に、中小企業においては節税目的で利用頻度の低い資産を売却し、その売却損を特別損失に計上し税引前当期純利益を赤字にしたり、黒字幅を圧縮しているケースがあります。このような場合には、必ずしも一過性の原因とはいえないこともありますので、特別損失の中身について確認しておくことが大切です。

 

逆に、経常利益は赤字だが特別利益で税引前当期純利益が黒字となっている場合もあります。例えば、遊休不動産の売却により大きな売却益が発生し、その売却益を特別利益として計上し、税引前当期純利益は黒字となるケースです。このような場合、黒字だから良かったと安心することは禁物です。たまたま不動産の売却益があったから黒字になっただけで、本質的には赤字だと考えることが必要です。

 

税引前当期純利益については、黒字、赤字で一喜一憂するにはなじまない指標です。表面的な数字に左右されることなく、経常利益以前の利益状況や特別損失の内容の把握により債務者区分を判断することが必要です。

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