粉飾はこのようにしてバレる②

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前回は粉飾がバレるプロセスとして、銀行が企業から預かった決算書の勘定科目(現金預金・売掛金・受取手形・商品)を精査する方法をお伝えしました。

今回はこの続きです。前回の記事をまだご覧になられていない方は併せてご覧ください。

目次

減価償却対象資産の精査の仕方

減価償却資産については法定償却をしているのかどうかがポイントです。法定償却していない場合、法定償却に引き直します。従って、減価償却対象資産については法定償却するようにしてください。

複数年に渡って減価償却をしていない会社には、直近の未償却残高を対象資産勘定科目から減算し、損益計算書の減価償却費に加算して調整を行っています。

土地の精査の仕方

銀行によって評価体系に若干相違があり、事業のために使用している不動産については簿価評価で良い銀行もあれば、直近の路線価で再評価し、簿価との差額を計上する銀行もあります。市街化調整区域については、固定資産税評価額と該当地区の評価倍率で評価します。

事業のために用いられる不動産については、原則簿価で見ています。なぜならば、会社が売上と利益を上げるための道具としての土地であるからです。それ以外で所有している不動産、遊休不動産、未稼働資産は路線価で評価しています。

その部分で含み損が出てくると、含み損の部分はマイナス評価します。含み益があればプラス評価をします。一方で、担保提供している、していないに関わらず、すべて路線価で引き直している銀行もあります。その部分は銀行に聞けば教えてくれます。

貸付金・仮払金の精査の仕方

この勘定科目、銀行が一番嫌う科目です。

なぜならば、貸付金と仮払金の勘定科目は、使途不明金と言われているからです。銀行員は、自行からの融資金の一部が貸付金や仮払金に使われているのではないかと考えます。仮に、この勘定科目がある場合、解消計画を立案して削減する意思があることを明確に銀行に伝えてください。

こんな例を聞きました。銀行員が社長に「毎年貸付金、仮払金が増えていますが、これは何で増えたのですか?本当のことを言ってくれれば支店長にはだまっておきますよ」と尋ねたそうです。

すると社長は、「愛人のマンションの頭金です」と答えました。その後、その銀行員から支店長にすぐ報告が上がりました。その会社には支店長の厳命が下り、3年間で1億円の債権回収が行われたそうです。

ケースにもよりますが、例えば社長自身の住宅ローンに使われた、ということであれば、本来許されない事ではありますが、ここまで厳しい処分はされなかったでしょう。代わりに個人の担保追加をもらうような処分程度で済んだのではないでしょうか。

しかし、このケースでは言い訳のしようがありません。倫理に反するからです。このようなことを行う人は、経営者の資質にも関係してくるため非常に問題なのです。従って、何でも正直に言えばいいというものではないということを覚えておいてください。

この(7)と次の(8)は銀行が非常に嫌がります。自分たちが融資したお金の一部が使途違反でいい加減な使われ方をしている。このような会社は事業継続ができないのではないかと考えられてしまうのです。融資を受けることを半年、1年程度我慢していただき、心を入れ替えて貸付金、仮払金を減らす努力をしている姿を見せない限り、今後は融資をしない、と厳しく言ってくる銀行があります。

未収利息の精査の仕方

貸付金の残高が減少していても、未収利息が減少していない場合は不良債権の認定になります。

従って、未収利息も減らすようにしてください。

保険積立金の精査の仕方

例えば、返済の条件変更の申請をした場合、その会社の保険積立金を取り崩し、融資元金の返済を要求してくる銀行もあります。

返済を止める場合や、新規で融資を申し込んで断られた場合、銀行は、その会社の保険積立金の取り崩しをして、半年や1年後、融資が受けられる状態になってから改めて申し込んでもらい、それまでは手元資金を一部取り崩して使ってほしいと要請してきます。

一方、仕訳がいい加減で、すべて掛け捨てタイプの生命保険に加入しているのにもかかわらず、すべて益金算入で仕訳を行っているのは良くありません。見ていますと、100社中に1社か2社はあるようです。

保険の設計書の中に、仕訳の項目は必ず明記されていると考えられるため、それを参考にしてもらえば分かると思います。それを見ずに仕訳がズレていることがおかしいと銀行員は思うのです。

返済を止めた時には保険積立金はしっかりあり、契約者貸付を受けていないのであれば手元資金は何とかなるのではないかと考えます。仮に契約者貸し付けを受けているのであれば、なぜ借入金に載せないのかと疑問を持ちます。

保険税務は複雑なため、格付けの時には適切に仕訳を見直すことが大切です。仮に含み益があっても銀行は含み益を評価しない銀行が多く、額面通りでしか見ていません。中には生命保険で大きく節税を行っており、解約したら自己資本比率がかなり上がるという会社もあります。

そのような会社の場合、最終的には簿外でキャッシュを残しているため、キャッシュリッチであるはずです。この部分も、実態の見地で見れば、解約したとみなした解約の一覧表を作成し持参すると、銀行が高く評価してくれることも結構あります。

今一度、加入している生命保険の仕訳が適正にされているのかどうか確認してください。

投資有価証券の精査の仕方

自己査定の基準日か融資先の決算日時点での終値で評価します。

ゴルフ会員券やリゾート会員券等は流通市場の価格で評価します。

関係会社株式の精査の仕方

決算書の提出をしていれば問題ありませんが、過度に事業内容や損益状況を無視するとゼロ評価されるケースもあります。また、銀行は関係会社の企業情報も入手しますので、その評点で評価されるため、注意してください。

ここでも含み損益を見ます。信用調査会社に登録している会社であればその評点を参考にしつつ、年商規模が小さい会社が中小企業(関係会社であれば小さい場合が多い)の1,000万円程度の関係会社株式を所有している場合、額面か、半分か、0か、おおむねそのようなイメージです。

一般的には、赤字続きで関係会社を使っていることが多くあります。売掛金、買掛金の勘定科目、関係会社の株式は相関性が高いため、ここを注視していれば、自分の子会社に赤字を流しているかどうは、優秀なメガバンクの行員は全部分かっています。そのような中で、子会社の決算書を提出しないのであれば関係会社株式は0評価です。それが原因で債務超過になり融資を受けられない会社も多くあります。

開業費(創業費)・自社用ソフトウエア・営業権の精査の仕方

これら無形固定資産に関しても5年で償却をしているかを見ています。

未償却の場合はその分だけマイナス評価します。

さいごに

このように見ていきますと、決算書の各勘定科目を詳細に見ていることが分かります。

また銀行は決算書を分析するとおかしな数字があればアラームが鳴る設備を導入していますし、決算書を数期分並べるとおかしな部分は手に取るように分かるものです。

粉飾はバレます。このようなことに注力するより、事業改善に努めるほうが結果として企業の継続性を高めることとなるでしょう。

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