
C社の事例 (設立1年目の自動車部品製造の会社)
創業して間もないので、金融機関からのお金の調達に苦労しています。C社の社長は今迄資金繰りについて深く考えたことはなく、日々のお金の調達が出来ればいいくらいにしか考えていなかったのです。
ある社長から、「会社の資金繰りをどのように考えているのか。お金が足りなくなればどこからか調達してくればいいという考えでは資金繰りは楽にならない」という話を聞きましたが、一体どういうことなのかわかりません。今後の会社の資金繰りにもかかわってくるので、勉強をしたいと思っているという状態です。
こんな悩みを抱える社長は多いのではないのでしょうか。資金繰りとは何か?あなたはこう質問されて明確に答えることはできますか?明確に答えられない方は続きをご覧ください。
目次
「資金繰り」は、お金のやりくり
資金繰りはよく、「お金のやりくり」といわれます。
確かにその通りですが、資金繰りとはお金の「出」(支出)と、お金の「入り」(収入)のバランスをうまくとりながら、必要な時に必要な額のお金を用意する事 といえます。
したがって、C社の社長の考え方は全く間違っていないわけです。
お金のやりくりとして考えた場合の資金繰りとは、大まかにいえば次のようなことです。
例えば会社におけるお金の「出」を考えますと、商品や原材料の購入、従業員への給料の支払い、水道光熱費や家賃、さらには借入金がある場合にはその返済もしていかなければなりません。このように様々な形でお金は出ていきます。
一方、お金の「入り」を考えると、会社であればお金の「入り」はそのほとんどが商品や製品を販売したことによる代金回収となるでしょう。したがって、基本的には会社はこの「入り」をもって様々な「出」をまかなっていくことになります。
もしある時点において「出」が「入り」を上回ると予想されれば、その分のお金をどこからか調達してこなければいけません。調達出来なければ、なるべく「出」を少なくしたり遅らせたりするか、逆に「入り」を大きくするか、または後の入金を早く回収するなどして、何とか「入り」を「出」より上回らせる必要があります。
もし、資金がショートしてしまいますと、会社の経営そのものが危うくなってしまいます。その一方「入り」が「出」を大きく上回る場合は、資金不足という問題はありませんが、多額の資金を眠らせておくことになり、それだけ利益を生み出すチャンスを失うことになりますので、余剰資金は出来るだけ有利に運用することが望ましいということになります。
このように、お金が足りなくなる場合には、どうにかして足りない分を調達し、お金が余りそうなときはそのお金の有利な運用をしなければなりません。それらのことをバランスよく考えるのが資金繰りなのです。
もう一つの資金繰り
先程資金繰りとは、お金の「出」(支出)と、お金の「入り」(収入)のバランスをうまくとりながら、必要な時に必要な額のお金を用意する事と説明しました。しかしそれは資金繰りという言葉の表面上の意味であって、本質的な意味とは少し異なってきます。
資金繰りとはその内容によって、大まかに次の2つにわけることが出来ます。
それは、目先のお金の確実なやりくり将来を見通した、計画的な会社の資金の運用と調達です。
1つ目の、目先のお金の確実なやりくり については、先程から申し上げている通り、資金繰りといえばまずこちらが思い浮かぶでしょう。これはC社も含めて創業間もない会社にとっては、非常に切実な問題でもあります。
限られた資金の中で事業を拡大していくには、お金のやりくりを一つ間違えるとその時点で会社は倒産ということになってしまいます。
したがって、創業間もない会社では、当面の資金の確保やそのやりくりということが、大切な一つの業務となってくるのです。C社など新しい会社の社長さんが、こちらの考え方しか思い浮かばないのも全く無理のないことです。
これに対して2つ目の考え方、すなわち、将来を見通した計画的な会社の資金の運用と調達は、その会社の財務体質をしっかりしたものにするために、絶対に必要な考え方です。
会社の財務体質を強固なものにするためには、いつまでも目先のお金のやりくりに追われているわけにはいきません。
なぜならば、日々の資金繰りは、その会社が持っている財務体質の結果が現れたものだからです。いつも資金繰りに追われている会社は、資金全体の運用と調達のバランス、つまり財務体質そのものを改善しない限り、いつまでたっても資金繰りは楽になりません。
したがって、会社、特に社長としては自分の会社の財務体質をしっかりと把握して、会社全体の資金の運用と調達について、根本から改善していくことを考えなくてはならないのです。
その場合において、金融業務に携わる皆さんとしては、取引先、とりわけその会社の社長さんの会社経営に対する考え方をいち早く見抜かなくてはなりません。そしてそこに何か問題があるようであれば、その問題を取り除く必要があるわけです。