
バブル崩壊を機に導入された銀行格付。令和元年12月に銀行格付の大元とされる金融検査マニュアルが廃止されて既に3年という時を経過しようとしています。しかしいまだに世間ではこの銀行格付に対する様々な情報があふれ、真偽のほどが怪しい情報をもとに決算書を修正する企業も少なくありません。
断言しますが、いくら決算書の数字を修正しても全く意味はありません。なぜ意味がないのか?これは銀行格付の3つのステップを理解し、そこでどのようなことが行われているのかを理解すれば納得されることでしょう。
気になる方は続きをご覧ください。
目次
格付の3つのステップ ①第1次評価(定量評価)
第1次評価は決算書の数値を使って評価します。具体的には・・・
・財務スコアリングモデルという評価基準に基づいた自動評価
・スコアリングで産出された点数は金融検査マニュアルが廃止された今でも大きなウェイトを占めている(銀行によって多少ウェイトは変わるが大筋は同じ)
・安全性・収益性・成長性・債務償還能力の4つの指標をもとに総合的に評価
世間に流布されている銀行格付のノウハウはこの1次評価の情報が多く、表面的なスコアリングを高めようと真偽が定かでない情報を鵜吞みにし、決算書を作成している企業も少なくありません。
しかし、銀行格付はスコアリングだけでなく、後程お伝えする実態把握と言われる第3次評価も重要なもので総合的に加味されて評価されているということを失念してはなりません。
格付の3つのステップ ②第2次評価(定性評価)
第2次評価は決算書ではわからない、評価しづらい要素について評価するものです。評価される主な内容としては次の通りとなります。
- 市場規模・市場シェア
- 業歴・経営方針
- 営業基盤・製品競争力 など
このように決算書には記載されていない事項ばかりであり、決算書や試算表を始めとした財務諸表をもとに定期的な訪問を重ね、企業実態を把握してこそ、この2次評価が初めて可能となるものです。
格付の3つのステップ ③第3次評価(実態評価)
第3次評価では、返済潜在力を評価します。これらは第1次評価や2次評価の評価対象とならない事項で融資先の返済能力を左右する事項を評価します。評価される主な内容としては次の通りです。
- 手形(不渡りはないか)
- 売掛金(架空・回収不能なものはないか)
- 在庫(不良・架空在庫はないか)
- 貸付金(回収不能なものはないか)
- 土地(実勢売買価格との対比)
- 有価証券(実勢価格との対比)
- オーナーの資産余力
以上のようなものを総合的に勘案し、不良性の資産があれば資産から控除します。また反対に土地や有価証券、オーナー経営者の資産余力があれば資産に加算します。
これらの後に実態の純資産額を算出し、返済潜在力を図るのが第3次評価なのです。
このように銀行格付とは融資の可否を判断するものではなく、企業の実態把握に努めるものだということがわかると思います。
多くの決算書に触れると銀行の視線を気にしすぎて、本来、営業外収益に計上すべき数字を売上として計上し営業利益を多く見せようとしたり、赤字を隠すようなことを行う社長も少なくありません。
しかし決算書は融資を受けるための道具ではなく、経営を振り返るための最高の道具なのです。3期分の決算書を並べ、売上と利益の傾向から今期の売上と利益の要因を分析し、達成すべき未来とのギャップを確認し、差を埋めるための方策を考えるための道具なのです。
であるにも関わらず、お金を借りるためだけに勘定科目を移動させ、実態把握が困難なものとしてしまうのは非常にもったいないことなのです。
銀行のために事業活動を行うのではなく、自分の目標のため、家族のため、従業員のため、そして社会のために行っていこうではありませんか。