
「銀行の格付」と言いますと、融資を受ける時に融資の可否を左右するものであるというイメージが強いと思います。社長は、自分たちがどこのランクに属しているのかを気にしており、融資が受けられるどうかの問題のみで捉えているのではないでしょうか。
しかし、一般的に言われているこの銀行格付けのことを、銀行では「自己査定」あるいは「資産査定」と呼びます。銀行では「格付け」と言うと、日本スタンダード&プアーズや日本格付研究所等の格付け機関から評価されるものであり、株や債権、社債を購入する時の目安とする格付けをイメージしています。
呼び名はさておき、この銀行格付、実は金融庁が発行した金融検査マニュアルが大元となっていることはご存じでしょうか。今回はそんな金融検査マニュアルと銀行格付の関係性についてお伝えしていこうと思います。
目次
金融機関によって金融検査マニュアルの「読み方」は違う
格付に関して色々な情報が出ていますが、一般的にはまだまだ浸透していないと言えるでしょう。
「金融検査マニュアル」という言葉を聞いたことがあると思います。これが格付のための大元であり、格付のための取扱説明書です。(2019年12月に廃止となりましたが、多くの銀行が今もなお、このマニュアルをもとに査定を行っています。)
いろいろな方が、金融検査マニュアルからひもとく!ここをこうすれば格付が上がる!といった情報をだしていらっしゃいます。金融庁のホームページにもアップされているので、誰もが大元を見ることはできます。
でも、銀行員か言わせると、「そこはなめるなよ」という気持ちではないでしょうか。「俺たちの流儀を知っているのか」というのが本音でしょう。
なぜなら、個別ですべての金融機関が、自分たちのオリジナルマニュアルを作っているからです。独自のマニュアルが流出したら、銀行は信賞必罰ですからヘタをしたらクビになります。だから、どんなに仲の良い、たとえ親友だろうと絶対に見せてはくれないでしょう。
格付の仕方は、ズバリ、金融機関によって違うのです。
大元の金融検査マニュアルは、簡素なことしか書いていません。例えば、正常先の定義は「業績がいい」というように書かれているわけですが、具体的にどういいのか、という細かい定義はないのです。要注意先は、決算書でいうと、どうなるのか……誰もが知りたいのです。でも銀行員ですらわからない。
つまり、大元の金融検査マニュアルは、あえて解釈できる幅を持たせているわけで、どうとでも読めるように書かれているのです。これを各銀行が独自の解釈をつけて運用しています。
格付はプラモデルを作るよりも細かい。そんなに簡単ではありません。
例えば、自社の決算書も読めない社長さんが、金融検査マニュアル攻略法みたいな本を読んだり、セミナーに参加してもわかるはずがありません。元銀行員だってわからない人が多いんですから。それをわかるように、各銀行がマニュアルを作って対応しているわけです。
メガバンク、地銀、信金・信組の順番で厳しさ度合は違う
格付の厳しさ度合でいえば、メガ、地銀、信金・信組。
そもそも、格付をする際は決算書の数字で判断する「定量」と融資先の経営者の人柄や取引先、保有設備や従業員に関する事項を見る「定性」の2つの軸が存在しています。
メガバンクは決算書の出てきた数字だけで判断する傾向が強いです。
地銀はメガバンクよりも訪問頻度が高いので、ある程度の定性も見れるでしょう。
信金・信組は、地域の中でも小回りがきく金融機関です。訪問頻度も地銀よりも高いです。だから、定性評価と呼ばれる決算書では見えない部分の評価が2~3割反映されているというイメージです。
社長が知るべきポイント。これはもうシンプルに考えたほうがいいと思います。
飾粉をしない状態で、債務超過になっていないかどうか。債務超過になっていたら「形が悪いですよね」と言われるだけ。
さらには資金繰り表を作って、お金の動きを把握すること。とても当たり前のことです。でも、この当たり前のことができない社長さんが多いから、日本の企業の9割は実態では赤字だと言われています。