
私の会社に相談に来た中で、次のような会社を見ました。
年商:2億8000万円,借入金:1,500万円
これは一見、借入金は少なく何に困っているのだろう?と考えてしまいます。しかし実はこの会社、あるものを滞納していたのです。しかも驚くほど多額に・・・
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一見優良企業に見えるが実は・・・
滞納していたものとは税金を1,500万円、社会保険料を2,000万円です。普通は運転資金を銀行で調達し、税金や社会保険料の滞納は発生させていないはずです。この会社の社長に話を聞くと、
「親の代から銀行からの借入は極力するな!と言われておりそれを守っている。」
と言います。しかしそれで税金や社会保険を滞納させてしまえば、本末転倒です。
また税金の支払いは国民の義務であり、それを滞納させている会社は、国民の義務を果たしていないということで、銀行から融資を受けることは困難です。この状態から税金・社会保険料の滞納を解消しようと銀行に融資を申し込んでも審査が通りません。
延滞には高い延滞税、延滞金がかかります。それより、銀行から1~3%の低い金利で融資を受けている方がよほど良いことが分かります。
こういう事例を見ると、企業を経営するにおいて「資金繰りの知識を持つ」、その中で「銀行との付き合い方の知識を持つ」ということはとても重要であることが分かります。
日本人は、「借入=悪いこと」という価値観がありますが、企業経営においては銀行から融資を受けることは大変重要であり、学び続ける必要があります。
また、銀行との付き合い方を学ぶ際、断片的な知識ばかりを求める経営者がいます。次のような会社を私は見ました。
グループ企業が多ければその分融資を受けられる可能性が高まる!?
グループ会社10社・グループ会社合計で年商2億円
年商2億円規模のグループで、10社あるのはあまりにも多すぎます。そのグループの統括である経営者に事情を聴いてみたら、次の答えが返ってきました。
「知り合いの経営者から言われて、会社をたくさん作るとその会社の数の分、多くの融資を受けられることを教えてもらった。」
しかし、銀行はこれらグループ会社10社を実質同一体として一つの会社と見ます。会社の数をいくら増やそうと、融資は1社に対して行うのと同じです。
それに加え、このように関係会社の数が多い場合、銀行は、そのグループの実態はどうなのか分からなくなってしまいます。そうすると融資が及び腰になってしまいます。実態がどうなのか、分かりにくい場合、銀行としては融資を行わないに越したことはないですから。
この例を見ると、資金繰りをうまく回していき会社を発展させていくための全体から見た財務の戦略がなく、「関係会社をたくさん作るとそれだけ融資は多く受けられる」という戦術、しかも間違った戦術に走り、かえって融資が受けにくくなり資金繰りが厳しくなっていることが分かります。
資金調達というと「何かウルトラCの資金調達方法はないか。」と探し求める人がいますが、これこそ戦術ばかり、しかもとっておきの戦術があるのではないかと探し求めている例です。
そういう戦術ばかり探す一方で、資金繰り表を作成することによる資金繰りの現状把握、そして資金繰り計画を立てるということを行っていないため、将来は結局、資金繰りが厳しい状態に陥ることになります。