銀行員の決算書の見方について

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企業が融資を受ける際、必ず提出しなければならない資料があります。

これが決算書です。金融庁は決算書に頼りすぎることなく融資審査を行うよう銀行へアナウンスを行っておりますが、残念ながら実現には至っていません。そのため、融資審査においては決算書が重要な役割を果たしていることは否定できない状態です。

企業が有利に融資を受けるには銀行員が預かった決算書をどのように見ているのか?そしてどのように評価しているのか?ここを知ることは非常に重要です。

銀行との交渉力を向上したい!このようにお考えの方は是非ご覧ください。(※こちらの記事「銀行との交渉力を高めたいなら、銀行格付けを理解しよう」も併せてご覧いただくとより理解が深まりますので是非ご覧ください。

目次

銀行員は決算書のまずここを見る!

銀行が決算書をお預かりすると、既存先、新規先問わず、まず最初に決算書の貸借対照表を開け、純資産の部の合計を見ます。表面で1円でもマイナスであれば、「お金は貸せない」と考えるわけです。

表面で1円でも債務超過であれば、さらに実態を細かく精査した場合さらにマイナスになっているかもしれないと考えます。

既存の融資先は3、4、5年と年数が長ければ長いほど、過年度の決算書を銀行に財務登録しているため、以前の決算書も履歴として残っています。

債務超過の状態が2年連続で続いている場合、銀行はその時点で新規融資はしなくてもいいようなイメージを持ちます。つまり、悪いイメージを持たれてしまうわけです。

銀行員は決算書をそのまま評価することはない!?

銀行員の感覚からすると、決算書の3割くらいは粉飾されている可能性があると考えています。その代表的な勘定科目は、第一が売掛金、第二が受取手形、第三が在庫です。

在庫の中でも、製品・商品だけではなく、半製品、原材料、仕掛品まで見ているのです。そこまでは見ていないだろうと考えがちですが、実は見ているのです。在庫の業界平均値と比較して、どのくらいの在庫が存在しているかをチェックしています。

そして銀行が嫌うのが貸付金、仮払金、貸付に対する未収利息です。これらは本当に非常に嫌がる部分であるため、必ず見ています。加えて、減価償却です。減価償却は税務的には本来任意ですが、銀行のルールではすべて法定で減価償却をしたものと引き直して別表の16をチェックします。減価償却の未償却残高がどれくらいあるのかをチェックします。

優秀な銀行ほど、決算書の中身を十分に精査します。規模が大きく優秀な銀行ほど、決算書は原本しか預かりません。規模が小さい金融機関ほど、控えを預かることがあります。さらに、勘定科目を提出したくないと会社側が言えば、それを許してくれる金融機関もあります。そうした金融機関はおおむね精度の低い査定しかできていません。

なぜならば、別表は税務会計の肝であり、銀行員は税務会計や財務会計、管理会計は何となくしか分かりませんが、彼らはお金を貸す仕事を生業としているため、その業務の一環として財務分析で税務会計に触れているだけだと考えられます。すなわち、自己査定が十分に行われていないがために、顧問先が損をする可能性が高くなるケースが起こり得るということです。

例えば、別表7では、繰越欠損金がいつまで続くのかをチェックします。理由としては、繰越欠損金が残っている場合、直近で債務超過になっておらず、税引後当期利益が出ていても会社は完調ではないと考えられるからです。そのため銀行側は注意事項とみなしこれだけでランクを下げられる可能性もあります。

会社の健康状態を一番良く表現してくれるもの、それが銀行格付けです

このように銀行員のすべてが、財務分析もこなし、お客さまのこともしっかり見ている、というわけではありません。私自身もコンサルタントとして活動していく中で、決算書の奥深さを知り、勘定科目を一つもらさずチェックしながら学んできた経緯があります。

よく税理士の先生方が月次監査の際、記帳業務以外にはなかなか手が回らない、ということを耳にします。しかし、最終的なゴールは、お客さまの所へ訪問した際、税務会計の見地、財務会計の見地に加えて管理会計の見地から、お客さまの決算書を精査し、「健康診断」を行うことです。これこそが銀行の格付けの視点であると言えます。

その中で、経営計画策定のお手伝いをする、月次の経理体制の見直しをしていく、翌月の10日くらいまでには試算表ができる体制を作る。そして、毎月の監査時には前月の振り返りを遅滞なく行い、損益の振り返りをする。

さらに欲を言えば、資金繰り支援の方法を担当職員の方が身に付けていただき、資金状態の振り返りをしていくこともできればなお良いと思います。そうすれば、顧問先の企業防衛にもつながるのではないかとも考えています。

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