
通帳使い方1つで企業の継続性は格段に変わる(前編)では、融資を受けている銀行の通帳で売上の入金や手形の支払いを含む決済を行っている企業と、入金や決済を行う通帳を融資を受けていない他行のもので行っている企業、どちらが継続性が高いのか?その理由と背景についてお伝えしてました。
今回は具体的な通帳の使い分けの方法についてお伝えしていくこととします。前編をまだご覧になられていない方はそちらからご覧いただくとより理解が深まることでしょう。
目次
具体的な通用の使い分けについて
企業の継続性を高めることを目的に手形・小切手の決済を他の支払いより優先させるため、もっと念入りに通帳の使い分けを行うのであれば、手形・小切手の決済口座(当座預金)では税金や社会保険料の自動引き落とし・公共料金の自動引き落とし・一般企業からの自動引き落としも行わないよう、別の口座で行うようにしておきましょう。
そして、将来、融資の返済ができず銀行に返済の減額・猶予(リスケジュールと言います)を申込む事態となってしまった場合に備えると良いでしょう。
融資の返済用口座とも別に、税金・社会保険料の自動引き落とし・公共料金の自動引き落とし・一般企業からの自動引き落としのための口座を作って指定しておくのです。
まとめますと、企業にとって理想的な預金口座の体制は次の通りです。
A.手形・小切手決済用口座(当座預金)
B.融資返済用の口座
C.税金・社会保険料の自動引き落とし、公共料金の自動引き落とし、
一般企業からの自動引き落としの口座(手形・小切手を切っていない企業はBとCのみ)
なお可能であるのなら、これらは全て別の銀行にしたいところです。
銀行には返済ができなくなった企業に対し、預金ロック、つまり預金口座から現金を引き出したり引き落としをさせたりできないようにする手段がありますので、そのリスクを分散するために全て銀行を分けるのです。
引き落とし金額の大小を使ったテクニック
なお、引き落とし金額が大きいものと小さいものがあった場合、残高から大きい引き落としが不可能で小さい引き落としができる場合、上記順番に関わらず、小さい引き落としが行われます。
例えば、融資の返済で50万円、電気料金の引き落としで2万円が同日に引き落とされる場合。
その預金口座の残高が5万円しかなければ、融資の返済は行われず、電気料金の引き落としのみが行われます。
引き落とし口座を分けることが間に合わず、同日に複数の引き落としが行われる場合、このようなテクニックがあることを知っておくと、後々役に立つでしょう。
例えばリスケジュールを銀行と交渉している最中で、融資の返済・利息の支払いはされたくないが、電気料金の支払いは行いたい場合などが想定されます。
一部の引き落としのみは止められるか
融資の返済・利息の支払いを止めることは、前日までだったら銀行との交渉しだいでは可能ということは述べましたが、では他の支払いは、銀行に依頼して止めることはできるのでしょうか。例えば、今度の社会保険料のみ引き落としを一時的に止めたい場合です。
このような一部の引き落としを一時的に止めることはできず、行うなら引き落としの契約自体を銀行か引き落とし元に言って、解約しなければなりません(ただし銀行によっては一時的に引き落としを止めることが可能です)。
預金口座の使い分けは非常時にこそ生きてくる
なおこのような銀行の預金口座の使い分けは、平常時はあまり意味があるものではありません。
しかし非常時、つまり資金繰りが厳しくなってきて、支払いの優先順位を考えたい時に、あらかじめ預金口座を使い分けていたことが有効となってきます。預金口座を使い分けておけば、それぞれの口座の残高を調整することにより支払いの優先順位をつけることができます。
これは将来の備えです。今は業績が順調でも、将来、何があるか分かりません。できることはやっておきましょう。