なぜ銀行は取立手形を預かりたがるのか!?

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なぜ銀行は、取立手形を預かりたがるのでしょうか?それは言わずもがな、銀行側にメリットがあるからです。

銀行側が取立手形を預かることで得られる理由とメリット、ここから導き出される銀行対策をお伝えします。

目次

取立手形を預かりたがる理由とは?

売掛先から売掛金を手形で受け取る企業の場合、自社の取引銀行に手形の取り立てに出し、換金してもらうのが一般的です。

そして、手形を取り立てるためには手形を支払人に呈示する必要があります。

手形の支払い呈示期間は支払期日を含めて3日以内(銀行休業日を含まない)であり、その呈示場所は手形の支払人となります。

しかし、取引銀行が手形を預かって手形交換所に呈示すれば、手形支払人に手形を提示したのと同じ効力があります。

手形取立の依頼を受けた銀行は、手形交換所を通じ、手形支払人が支払銀行として指定している銀行に呈示を行います。

しかしその呈示期間は支払期日から3日以内ですから、遅れることのないよう、余裕をもって取引銀行に預けておく必要があります。

そして取り立てたい手形は、支払期日まで日にちがあっても、銀行は預かってくれます。そこに実は、銀行のメリットがあるわけです。

取立手形を預かった銀行は、支払期日に手形交換所に持ち出せるように、支払期日ごとに手形を並べ、期日管理をしております。

そして支払期日になったら手形交換所に持ち込みます。支払銀行が遠方の場合は、支払期日前に持ち出しを行います。企業から取り立て手形を預かり、支払期日に持ち出せるように期日管理を行うのは、ミスを犯すリスクを考えると、銀行にとって重労働に見えます。

しかし、取立手形を預かることは、次の3つの点で銀行にメリットがあるのです。

  1. 取立手形手数料を稼ぐことができる。
  2. 預金残高を多くできる。
  3. 融資の保全となる。

メリット1.手形取立手数料を稼ぐことができる

今の低金利時代、融資による利息収入だけでなく、銀行は収益を上げる手段をいろいろ取り組んでいます。その中で手数料収入は銀行にとって重要な収益であり、手形取立による手数料も銀行にとっては大きな収益源になります。

例えばあるメガバンクでは、1件700円~1,000円で定めています。

一企業に集まる受取手形を自分の銀行で取り立てに出すようにしてもらえば、銀行は手形取立手数料による収入を多くすることができます。

 メリット2.預金残高を高くできる

手形を取り立てると、取り立てた銀行の預金口座に入金されます。このような入金機会が大きい口座は、預金残高が高くなるものです。

またその口座を企業はメイン口座で使ってくれることを期待できます。なぜなら企業は、事務の効率化のために使う口座は集中させたいと考えることが多いからです。

メイン口座となれば、手形取引以外に売掛金の入金口座としても指定してもらいやすくなります。また、振り込み、口座振替などほかの手数料を企業からもらえる取引も集まりやすくなります。

 メリット3.融資の保全となる

返済が出来なくなった場合、銀行は預かっている取立手形を、融資の相殺に充てることが出来ます。

企業と銀行が取り交わす銀行取引約定書には、期限の利益の喪失要件が記載されています。企業は長期の融資を受ける場合、毎月いくらずつ返済すればよい、というのが企業にとっての期限の利益です。

例えば3,000万円を返済期間5年(60回)で融資を受けた場合、毎月50万円を5年かけて返済すればよい。というものが期限の利益で、その喪失となれば、一括で融資を返済しなければならないということになります。

では、この期限の利益の喪失はどのような場面で起こるのでしょうか。

破産・民事再生などの場合、自社自身が手形不渡りにより銀行取引停止処分を受けた場合、企業もしくは保証人の預金などに差し押さえがあった場合は必ず期限の利益が喪失されます。

融資返済の延滞、担保に他社から差し替え・競売手続きがあった場合、銀行との取引約定に違反した場合などは銀行の請求により期限の利益の喪失となります。

そして期限の利益が喪失すると、企業は融資の残高を一括で銀行に返済しなければなりませんが、それが可能な企業はありません。

すると銀行は担保を競売し、保証人に取立て、またその企業が銀行に預けている預金を融資と相殺するといったことを行ってきます。

そこで預かっている取立手形が銀行にとって大いに役に立つのです。

手形の支払期日が到来し、手形を取り立て、代わりに現金が入金されたとしても、このお金もまた、融資と相殺とされるのです。

まとめ

このように、銀行は取立手形を一種の担保の手段と考えています。だから銀行は積極的に、自分の銀行に手形を持ち込んでもらいたいのです。

そしてなるべくなら、支払期日の到来する期日よりもより早い時期に預かりたいと考えています。そうすると、預かっている取引手形の金額が大きくなるわけですから。

これまでお伝えした3つの理由が、銀行が取引手形を預かりたがる理由です。

これが分かれば、受取手形をどの銀行に取り立てに出すか、これも銀行にとっては重要であることが分かります。

それぞれの銀行の自社へのスタンスを見ながら、バランスを考えていくことが1つの銀行対策となるのです。

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